基調講演・大会企画パネル

2019年5月23日更新

基調講演者

Marilda C. Cavalcanti  カンピーナス大学教授、ブラジル

招待講演者

Mitsuyo Sakamoto (坂本 光代) 上智大学教授、日本

Thomson Chihiro Kinoshita (トムソン木下千尋)ニューサウスウェールズ大学教授、オーストラリア

Emi Otsuji (尾辻恵美) シドニー工科大学コーディネーター

 

基調パネル1(USP)

 

基調パネル2(JSPS)

社会・人・ことばの動態性と統合ー「日本」とのかかわりを中心にー

パネリスト:ダニエル・ロング(首都大学東京)中井精一(富山大学)  尾辻恵美(シドニー大学)岡田浩樹(神戸大学)

モデレーター:松田真希子(金沢大学)

基調パネル3(JFSP)

 

招待パネル1

複言語・複文化教育としての日本語教育に必要な地域間連携とは何か-日本、ブラジル、アメリカ、その他地域との連携を考える-

パネリスト:カルダー淑子(プリンストン日本語学校)、野山広(国立国語研究所)

モデレーター:福島青史(早稲田大学)

招待パネル2

内容言語統合型学習(CLIL)に基づいた PEACE プログラムの構築 ―異なる日本語レベルとテーマによる実践―

パネリスト:奥野由紀子(首都大学東京) 、佐藤礼子(東京工業大学) 、渡部倫子(広島大学)

モデレーター: 奥野由紀子(首都大学東京)

ディスカッサント: 阿部新(東京外国語大学)

招待パネル3

往還するこどものことばと教育 ー すべてがつながり、すべてが「+」になる教育をめざしてー

パネリスト:櫻井千穂(広島大学)、宮崎幸江(上智大学短期大学部)、伊澤明香(大阪経済法科大学)、平吹洋子(愛知県豊田市立保見中学校)

モデレーター:松田真希子(金沢大学)

 

招待講演要旨

招待講演1

MITSUYO SAKAMOTO, Sophia University

 

Monolingualism to translanguaging and beyond:

Exploring perspectival evolution of what it means to know languages

Keywords: bilingualism, translingualism, theoretical evolution, psycholinguistics, sociolinguistics

Given advancements in applied linguistics research, technology and international mobility (Vertovec, 2007), our conception of “knowing languages” has evolved from a simplistic view that espouses monolingualism as the norm to something more complex, nuanced and contextual (e.g., Block, 2012; Blommaert, 2016; Pennycook, 2001; Rampton, 2016; Sakamoto, in press). This evolution will be traced, starting with the separate underlying proficiency (SUP) model (Cummins, 2001) and natural approach (Krashen & Terrell, 1983), extending to other discussions including domain-specific language development (Grosjean, 1998, 2008) and the notion of multicompetence (Cook, 2008). The claims made will be explored to see to what extent they address the realities of those who are exposed to and know different language(s) besides the mother tongue.

One of the most recent notions that reflect postmodern epistemology in knowing multiple languages is translanguaging (Garcia & Wei, 2014), and indeed it has afforded us an important, insightful, useful and powerful reconceptualization of a multilingual individual. Garcia and Wei (2014) insist that bilingual’s linguistic repertoire is neither L1 nor L2, but one new, unique system comprised of features that are always at bilingual’s disposal, to be used creatively. This notion has led to a call for de-stigmatizing the idiosyncratic language variety used by those who know and use more than one named language, thus celebrating and empowering their language use.

However, irrespective of translanguaging realities, it is argued that students are never free to exercise language use in their own ways in school (Sakamoto & Saruhashi, 2018); whatever that is in line with social norm is rewarded (Kubota, 2016), and other varieties and language practices, including translanguaging, are often dismissed, if not penalized.

Furthermore, if translanguaging is not only confined to classroom but impacts beyond, in addition to descriptions of and examples from classroom, there needs to be discussions that describe social transformations which are enacted by educators, students, schools and others via translanguaging. Moreover, in addition to documenting creative and idiosyncratic moments of translanguaging, there needs to be concrete suggestions made as to how students can be supported and facilitated to engage in translanguaging, not just in the classroom but beyond.

While the advancement in our knowledge has been extensive and compelling, it is argued that complex realities of multiple language knower (the terms such as “bilingual” and “multilingual” are purposely avoided here) are still not fully realized and hence appropriate ways of educating them are still ill-defined. A call is made to further our understanding and appreciation of translanguaging in order to maximize what our students have to offer. 

 

 

 

基調パネル1(USP)

 

基調パネル2(JSPS)

社会・人・ことばの動態性と統合ー「日本」とのかかわりを中心にー

 

趣旨

本パネルでは主として社会・人・ことばの動態性と統合について議論するものである。本国際シンポジウムには以下のように趣旨が書かれている。

現在、交通手段、通信手段の発達により、空間に拘束されない生活が基本的な居住態となっています。社会・人・ことばの動態性が高まったことで、国、民族、社会、言語などについて、従来当たり前のものとして捉えていた考え方を根本から変えていく必要性に迫られています。

同時に、地球規模の移動により、こどもの教育や発達の問題、コミュニティの問題、国の言語政策の問題なども起こっています。移動や移住によって教育、福祉、コミュニティ、政治に混乱が起こり、社会的な問題となるケースが世界中で起こっています。まず、こうした状況がことばや社会に与えている変化や影響を的確に観察し記述する研究が求められています。そして、平和で社会包括的な世界へと導くための学際的な研究が求められています。

 

人の移動・移住の問題を考える際、ある場におけるある現象だけを、ある一分野において研究していては、「なぜそのような状況が起きているのか」「これからどうすればいいのか」を包括的に検討することはできない。時間・空間軸、そして社会・人・ことば等を歴史学、社会学、言語学、文化人類学、教育学等の分野から学際的・複合的に検討する必要がある。しかし、現状ではそのような移民にかかわる学術間連携が十分であるとはいいがたい。

本科研では、「日本」にかかわる動態性と統合を考える際で重要な視座をしてくれる南米日系社会に着目し、多様な学術分野の専門家が連携し、調査研究を行っている。本パネルでは、「日本」と「移動」にかかわる社会言語、文化人類学的研究を南米以外のフィールドでも行っている研究者が、他地域での研究成果を今回の南米調査結果によって得られた知見とまじえて報告しながら、「社会・人・ことばの動態性と統合」ということを議論するにあたり、従来の研究では十分に検討されていない点、今後の研究のための新たな視点の提供、問題提起などを行う。

 

全体要旨

 

パネリスト

 

 ダニエル・ロング(首都大学東京)

 中井精一(富山大学)

 尾辻恵美(シドニー大学)

 岡田浩樹(神戸大学)

 

モデレーター

 松田真希子(金沢大学)

 

各パネリストの発表要旨

 

ダニエル・ロング

ボリビア、パラグアイ日系調査から得られた知見 ―複言語状況と混合言語に注目して―

言語接触、中間言語、混合言語、言語干渉

 

本発表では20178月にボリビアとパラグアイの日系人コミュニティで行なったフィールドワークを振り返って、複言語状況を概説する。そのあと言語接触現象、主に言語干渉と混合言語について考察する。

まずパラグアイのデルエステ(Ciudad del Este)で2世と3世を対象に、調査票に基づいた面接調査を行なった。ブラジルとの国境に接した町で、毎日日帰りで仕事のために国境を歩いて渡る人が大勢いるほどポルトガル語との接触が日常的に繰り返されている。5言語話者に会った。日系人だとうことで日本語が流暢に話せる。パラグアイ生まれ育ちであるゆえにスペイン語が母語となっている。そして、ヨーロッパ系、日系共にみられるジョパラ語(先住民の一言語であるグアラニー語の単純化された接触言語)によるコミュニケーション能力を備えている。この国境の町で家業として商店を営んでいる関係で、ブラジルから来たお客に対応できるほどのポルトガル語能力もある。そして、親の教育理念によってアメリカで生活できるレベルの英語能力もある。

 次に、言語接触のいくつかの現象について考察する。ボリビアのOkinawa開拓地でも現地調査を行なった。そこで日本語とスペイン語を巧みに織り交ぜた(intertwined)ことばを聞いて録音する機会を得た。言語構造の特徴からBakker等が提唱した「混合言語」(Mixed Language)に匹敵すると発表者が見ている。本発表では発表者が20年以上から研究している小笠原混合言語との共通点と相違点を整理する。例えば、次のやり取りが見られた。

BY: 釣って来た?

YT: 労働者とYukiと行って来た。

BY: 本当?

YT: 見回りのなんかatrajo[引っ張って]、después[あと]全部で八匹(はちひき)ぐらい釣った。

 最後の文で、atrajoは「引っ張る」を、despuésは「後」を意味するので、「見回りの[人]なんか引っ張って、後、全部で八匹ぐらい釣った」という意味である。これは文内コード切り替えではあるが、ただ単にスペイン語の名詞を取り入れているだけではない。同一の節(phrase)内で主語(見回り)が日本語であるが、述語(atrajo)はスペイン語である。発表では、筆者2018bで分析した小笠原諸島混合言語との相違点、共通点を探ってみる。

参考文献

工藤 真由美、森 幸一、山東 功、李 吉鎔、中東 靖恵(2009)『ブラジル日系・沖縄系移民社会における言語接触』ひつじ書房

工藤真由美、森 幸一(共編)、山東功、李吉鎔、朴秀娟(分担執筆者)(2015)『日系移民社会における言語接触のダイナミズム ―ブラジル・ボリビアの子供移民と沖縄系移民―』大阪大学出版会

 

ダニエルロング

自己紹介と写真

 

中井 精一

南米日系人社会における日本語・日本文化の継承

キーワード 県人会 年中行事 日本祭り 伝統芸能 郷土料理

 

要旨 

南米日系人社会は、いかなる社会なのか。日系人とは私たち日本人とどこかが同じで、どこが違っているのだろうか。またそこで話されている日本語は、どのような特徴をもつ日本語で、それはどのように生成されてきたのか。

昨年、2018年7月21日、São Paulo Exhibition & Convention Centerで、日系移民110周年を祝して盛大な記念式典が開催された。この式典は、毎年行われるブラジル日本都道府県人会連合会主催のフェスティバル・ド・ジャポン(日本祭り)の一環として開催されたものである。フェスティバル・ド・ジャポン(日本祭り)は、都道府県人会を通じて受け継がれている郷土食と郷土芸能を日系人ばかりでなく、ブラジル人に広く紹介すること、そしてこの行事に参加して途絶えがちな一世から次世代への継承および世代を超えた、共同作業による融合を目的として、1998年にブラジル日本移民90周年を記念して『第1回日本郷土食・郷土芸能まつり』として開催されたことにはじまる。つまりフェスティバル・ド・ジャポンは、日本食および郷土芸能を「日系人」と「ブラジル人」に紹介すること、日本食および郷土芸能を中心とした日本文化を二世以降の日系人に継承すること、そして共同作業によってもっぱら世代間の融合を目的として開催されている。

伝統的な日本社会では、一般的に同じ地域で暮らす人びとは、安定的で継続的な生活の維持を望み、生活様式や価値観、制度や思考、しきたりや言葉遣いなはある程度共通している。そしてそういった共通性は、祭礼や年中行事、家屋の様式やムラのたたずまい、郷土料理や行儀作法といったその社会特有のスタイルとして外部からは「個性」と意識され、世代を経ることで内部強化につながっていく。しかしながらフェスティバル・ド・ジャポンのありように注視すれば、現在のブラジル日系人社会は、日本社会とは異なる社会的あるいは文化的基盤にあることは議論の余地はない。

このような状況を受けて本発表では、日本語・日本文化の世代間継承に注目し、日系人社会が共有し受け継いできた伝統文化や習慣、言語生活や方言について、ブラジル富山県人会およびアリアンサ、コロニア・ピニャール、ミランド・ポリス等で実施した聞き取り調査をもとにその実態を報告し、ブラジル日系人社会において望まれる日本語および日本文化のありかについて考えてみたい。

 

参考文献

市川利雄(松尾幸子訳)2010『富山県からブラジルへ ブラジルに存在する富山県の歴史』市川利雄

富山県南米協会1989『富山県南米移住史』富山県

 

中井精一

 

 

尾辻恵美

誰が?何に?どこに?:メトロリンガリズムの視点からの社会統合・包摂の再考

 

要旨

人の動きが益々顕著化し、様々な背景を持った人びとが共に暮す地域・社会が以前にもまして増えている中、社会統合 (social integration)、社会包摂・インクルージョン (social inclusion)、ダイバーシティということばを昨今よく耳にする。しかし、ダイバーシティという言葉を振りかざしているにもかかわらず、社会統合・包摂の内実はいまだに移動してきた人がマジョリティに抱え込まれるという図式が強く、そこにはモノリンガリズム・モノカルチャリズムの思考が伏在している。インクルーシブにおいても、一般的にマジョリティの社会に平等にアクセスを与えることと解釈されているが、そのマジョリティの社会に潜むイデオロギー自体が変わらない限り、インクルーシブとは言い難いのではなかろうか。さらに、この構図には、包摂されると有利である「メインストリーム」が存在するという前提もある。つまり、多様な資源を駆使して、日常生活を営んでいる草の根の経験や視点が無視されている。

日常のマルチリンガリズム(everyday multilingualism)という視座から街とことばの関係を探るメトロリンガリズムを援用し、当発表は東京、シドニーで収集したデータを元に、人々が日常生活において、オンライン、オフラインを問わず多様な言語、物質、知識などの資源を有効に使って、種々様々なグループや人とつながっている様子を紹介する。特に「統合とは何か」という問いについて、「どこに」「何に」統合されているのかを批判的に考察することにより、ことばの多様性が社会統合の鍵であり、マジョリティの言語ではなく、ことばのダイバーシティが人や街を結束させるものであると提唱する。

尾辻恵美

シドニー工科大学、准教授。 主な研究分野は、社会言語学で、特にグローバル化の街における日常言語活動への影響(メトロリンガリズム)が有名である。また、セミオティック景観、パーフォーマティブ論に基づいた言語とアイデンティティの研究、市民性・公共性とことばの教育、言語教育における批判的談話分析などが挙げられる。

 

基調パネル3(JFSP)

準備中

 

 

招待パネル

9月5日

15:00-16:30

招待パネル1

 

複言語・複文化教育としての日本語教育に必要な地域間連携とは何か

-日本、ブラジル、アメリカ、その他地域との連携を考える-

 

パネリスト

カルダー淑子(プリンストン日本語学校)

野山広(国立国語研究所)

 

モデレーター

福島青史(早稲田大学)

キーワード 継承語教育 外国にルーツをもつ子ども 移民 ネットワーク

要旨

本パネルでは、複数の言語・文化環境で育つ子どもたちの言語、日本語のあり方と、そのような子どもたちが生きる環境を整えるのに、各地域間で必要な連携とは何かを議論する。 

言語の機能は、単にコミュニケーションツールとして、人と人をつなぎ必要なタクスを達成するだけではなく、思考の媒体として世界に対する知識を形づくり、価値観の創造に寄与する。またこれらの活動を通して、人は自分がどのような人間か、どのように生きるのかを、他者との関係から、あるいは社会に存在する価値観との相克・対立から見出していく。これらの言語機能を仮にコミュニケーション、思考、アイデンティティとすると、外国語教育としての日本語教育は、思考やアイデンティティといったものが確定した成人のためのものであり、主な関心は言語のコミュニケーション機能にある。しかし、近年のグローバル化の結果、日本における外国人子弟、外国における日本人子弟、国際結婚家族の子弟など、複数言語の環境により育つ子どもが増加してきた。それに伴い、日本語教育は複言語・複文化教育の一貫として、コミュニケーション機能のみならず、思考、アイデンティティを含む包括的な機能を視野に入れられるようになってきた。ブラジルをはじめとする南米諸国の日系人子弟の日本語教育はその先駆けであり、その歴史と言える。

これらの子どもたちは、外国にルーツを持つ子ども、継承語学習者、日系人子弟などと呼ばれる。これらの概念に共通するのは、現在、参加している社会と異なる文化や言語に紐付けられ、さらに自己内に複数の言語・文化が機能しているとされている点である。確かに、子どもたちは複数の言語形式、異なる文化習慣・行動を併せ持っている言えるだろうが、同時に、子どもたちは、それらの差異を超えて一人の存在として、コミュニケーションし、思考し、自分の生を創造している。複言語・複文化教育としての日本語教育とは、このような「多にして一」という子どもたちの二重性を明確に意識し、複数の言語・文化の境界を超えた一人の人のことば、その中の日本語の位置を明確にし、教育の柱とする。

このような状況の中、それぞれの国・地域で日本語教育実践が行われれるが、各地域での連携の必要性はないだろうか? また、その連携はいかなる効果をもたらすだろうか? 本パネルでは、未来の企画に向けて、日本、ブラジル、アメリカ、その他の地域での具体的な連携の可能性について、会場の参加者も含めて議論したい。

 

16:40-18:10

招待パネル2

内容言語統合型学習(CLIL)に基づいた PEACE プログラムの構築 ―異なる日本語レベルとテーマによる実践―

 

パネリスト

 奥野由紀子(首都大学東京)

 佐藤礼子(東京工業大学)

 渡部倫子(広島大学)

モデレーター 奥野由紀子(首都大学東京)

ディスカッサント 阿部新(東京外国語大学)

キーワード CLIL、4C、社会的課題、スキャフォールディング、日本語教育実践

 

「なんのために言語を教えているのか」このような問いを言語教師は自分に向けること

があるのではないだろうか。外国語教室は、学ぶ言語を通して、また参加する学習者が持つ 社会背景や文化背景を活用して、様々な活動が可能である。学習者の言語能力の向上とクリ ティカリティの育成を担う外国語教育の場においては、社会的課題などをもっと意識的に 取り込み、考慮して教育を実践することが求められている。日本語教育現場において、昨今 の社会情勢をふまえ、自分たちをとりまく社会、世界をより平和的なものにするために何が できるのか、世界的な共通課題を乗り越えていくためにどのような後押しが可能なのかに ついて考える必要がある。そこで本パネルでは、Content and Language Integrated Learning (以下 CLIL)を取り入れた PEACE プログラムを提案し、授業実践で行った工夫や、成果 や課題を具体的に示す。

CLILとは、学習者が特定の教科またはテーマを学ぶことにより、内容の理解と目標言語

の運用能力、学習スキルの向上を同時に進める教授法であり、4C(Content:内容Communication:言語知識・言語使用, Cognition:思考, Community/Culture:協学・異文

化理解)を意識して活動を取り入る点が特徴的とされる(Coyle et.al. 2010, 奥野他 2018)。

本プログラムでは、「PEACE」という5つのテーマを取り上げた。「P:Poverty 貧困からの脱却」「E:Environment 環境」「A:Assistance in need 自立のための援助」「C:Cooperation & Communication 協働と対話」「E:Education 教育」である。これらのテーマは、これから世界とつながる社会へ出て行く若者が人として考えるべき問題、また多角的な視点から思考を深めることができる内容でもある。 レベルに応じて、初中級では、身近な「食」に焦点をあて、主に日々の食事から世界の食 や環境に関する問題(E:Environment 環境)について、中上級では、目を背けがちな「貧困」に焦点をあて、貧困のメカニズムや貧困解決を目指した活動(P:Poverty 貧困からの 脱却)について、超級(母語話者を含む)では、受講学生の専攻である「教育」に焦点をあて、複言語環境で育つ子どもが直面している課題と支援策(E:Education 教育)について取り上げた。そして、各テーマと自分達との関わりについて知り、説明し、考え、発信する能力・技能(4C)を養うことを共通の目的とした。

 本パネルではレベルの応じた 3 コースをどのようにコースデザインし 4C を意識した活動を取り入れたのか、どのような取り組みを行ったのかを発表し、授業実践に見られる課題や、受講者の学びがどのように深まったか、学習・教授プロセスを分析する。分析対象は、学習者の成果物、ポートフォリオ、担当教師や実習生による観察・レポート等とする。そして、3つのレベルからの発表の後、ディスカッサントとのディスカッションによって、ブラジルの日本語学習者への応用の可能性を探り、教育現場に還元可能な具体的な情報を提示することを試みる。

 

パネリスト と報告テーマ

奥野由紀子(首都大学東京)「初中級における世界の食や環境をテーマにした実践

―スキャフォールディングでつなぐ―」

佐藤礼子(東京工業大学)「中上級における世界の貧困問題をテーマにした実践

―コミュニティで学ぶ―」

渡部倫子(広島大学)「超級における複言語環境で育つ子どもの教育をテーマにした実践

―ポートフォリオで振り返る―」

 

9月6日

10:20-12:00

招待パネル3

往還するこどものことばと教育 ー すべてがつながり、すべてが「+」になる教育をめざしてー

キーワード CLD児童生徒 複言語 アーティキュレーション 往還 インクルージョン

 

パネリスト

 櫻井千穂(広島大学)

 宮崎幸江(上智大学短期大学部)

 伊澤明香(大阪経済法科大学)

 平吹洋子(愛知県豊田市立保見中学校)

モデレーター

 松田真希子(金沢大学)

 

要旨

地球規模の往還の時代において、両親の往還に帯同するこどもの教育のアーティキュレーションとインクルージョンをどのように実現するかは大きなテーマである。現状では、一回性でなく、繰り返される移動によって言語能力や認知力の発達が阻害されている子どもが増加している。移動によってことば、人的ネットワーク、教育システムが分断されるため、移動元の言語を喪失する、家庭内言語が十分に保持されない、移動先の学校に適応できず不登校になる例などが確認されている。今後人の往還は更に加速することが予想されるため、分断のない教育をいかにして可能にするかが課題である。つまり、往還してもまなびつづけられるような共通の参照枠に基づいた教育システムのアーティキュレーションの実現と多様な言語文化背景に対応したインクルーシブな教育デザインが必要である。

ホスト国の言語だけでなく、マイノリティの言語による学びの機会をいかに保証するか、マイノリティの言語による自己実現の機会をいかに保障するか、家庭内言語をいかに学校の場でも奨励できるかが、彼らの学びのアーティキュレーションを考える上で重要である。同時に、複数言語によって学校教育を受けるこどもたちに、学年による一律の学習到達目標を設定しないこと、参照枠によって言語能力や学力を評価し、異年齢の子どもが能力レベルに応じて学べる柔軟さも重要である。

本パネルでは、往還の時代を生きる南米ルーツのこどもたちの複言語能力についての研究成果、および、日本の集住地区の公立学校でのインクルーシブな教育実践について報告し、議論の場を提供する。

 

パネリストと報告テーマ

櫻井千穂(広島大学):日本在住のCLD児童生徒の二つの言語能力の実態―対話型アセスメントを活用してー

宮崎幸江(上智大学短期大学部):日本育ちの子どもの日本語力とペルー帰国後の適応

伊澤明香(大阪経済法科大学):ブラジルの日本とつながりのある子どもたちの日本語保持と家庭内言語環境

平吹洋子(愛知県豊田市立保見中学校)南米ルーツ児童生徒の集住地域における公立学校の挑戦


 

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